“伝わる”資料の作り方ガイドブックを無料進呈
皆さんはプレゼンテーション資料(報告書、提案書など)を作成する際に、どのくらい時間をかけていますか?
「働き方改革どころか、資料作成の為に残業してるよ!」という方が多いのではないでしょうか。
別にプレゼンテーション作成に時間をかけるのが悪いという訳ではありません。それよりも、資料作りの、どのプロセスに時間をかけるのかが重要になってきます。まずは参考までに、ビジネスマンたちの普段の業務における資料作成に関する実態調査結果をご覧ください。
資料作成に関する実態、意識についてのアンケート結果
全国の20代~60代の企業に勤める正社員。ビジネスマンたちの普段の業務における資料作成に関する実態、意識についてのアンケート結果です。
※プレジデント・NTTコムリサーチ共同 ビジネスマンの資料作成に関する調査を使用。
※調査対象割合:男性92%:女性8%/年代:20代20%、30代20%、40代20%、50代21%、60代19%
経営者・役員9%、部長9%、課長・次長11%、係長・主任16%、一般社員52%、その他3%
Q1.報告書や提案書など、A4サイズ1枚見当の資料を1枚仕上げる平均時間は
提案書だけではなく、報告書も含む統計ですが、A4サイズ1枚の資料作成を1時間以内で仕上げるという方が60%いらっしゃる一方で、3時間~6時間以上かける方もいらっしゃることが分かります。
さらに、別のアンケートでは、一週間に作成する資料の平均ページ数は1~10枚までが83%を占めるという結果が出ておりますので、仮に資料を週に10枚作成するとした場合、1枚当たり1時間以内の方なら約10時間、1枚当たり3時間かかる方なら60時間と、多くの勤務時間を資料作りにかけているということが分かります。
Q2.他人の資料をチェックしていて見つけた失敗点は
こちらは自らの眼ではなく、第三者視点でチェックしていて見つけた失敗点です。
誤字脱字が多い、期日より遅いなどということはよくありがちなミスだと思いますが、ここで注目して欲しいのは、「文章表現が不適切」19.0%、「誤解を招く(要点が曖昧)」17.0%、「見づらい」17.0%、「欲しい内容の資料でなかった」10.0%といった資料の内容に関するミスが合計で60%を超えているという点です。
そもそも、「欲しい内容の資料でなかった」というのは、「資料作成にかけた時間がすべて無駄だったのでは?」という悩ましいご意見ですね。
Q3.過去の資料作りの失敗をふまえ、今資料作りで一番悩むことは
そして過去の失敗を踏まえたうえで、最も悩んでいることはというアンケートでは、「時間がかかりすぎる」が28.0%でトップ。そのほか、「図版などが上手く入れられない」22.0%、「見た目が悪い」15.0%など、見やすい資料をどのようにして作成したらよいか悩まれていることが鮮明になっています。
今回はこれらの結果を踏まえ、プレゼンテーションの中でも決裁者から理解・了解・納得を得られる資料づくりにフォーカスを絞って、作成ノウハウを書かせていただきたいと思います。
プレゼン作成の為に重要なこと
皆さんはプレゼンテーション資料を作成する際に、どのような手順を踏んでいますか?いきなりパワポを広げて作り始めるという方が多いのではないでしょうか。
私はまず、自分の頭の中を整理することから始めます。
頭の中を整理する方法として、世の中には様々な手法がありますが、私が決裁者向けプレゼンテーション資料作成の際に、重要視している点は以下の3つです。
分かりやすい
プレゼンに最も大切なことは資料作りです。特に決裁者向けプレゼンに関しては、シンプルであることが大切です。なぜならば、様々なビジネス判断をしなければならない決裁者を、長時間縛り付けるのはとても迷惑だからです。
その為、決裁者が意味を理解するのに1枚当たり10秒以上かかるスライドは適切ではありません。本編は全体で3~5分で終えることを心掛けると良いでしょう。
中にはスライドを何十枚も用意する方がいらっしゃいますが、スライドの枚数が多いと、3~5分で終えることはできません。
本編には余計な情報を入れ込まず、5~9枚で仕上げると良いでしょう。説得力がある
必ずロジカルであること。特に決裁者を説得するプレゼンにとって重要なのは、感情ではなく、ロジックです。ビジネスのロジックに合致していることが、説得のポイントとなります。社外向けプレゼンで聴衆を惹きつける為には感情に訴えかける演出も重要ですが、全体的にはロジックであることが最も重要であると考えています。魅力的である
現在の課題に対して、適切な財務的効果(コスト削減や本業の儲けなど)があることを示すことです。課題が生まれる原因に共感を得て、それを具体的に変える手法を示すことがとても重要です。
要約すると、決裁者の立場に立って考えることです。
提案内容を彼らが、理解・了解・納得する為にはどうすればいいかを徹底的に考えます。その為にはプレゼン内容は必要なことのみに絞り、その妨げになってしまう余計なことはやらないと考えるのが良いでしょう。
また、プレゼン時間は内容に関する質問時間も含め、3分、遅くとも5分以内で終わらせるのが適切だといえます。
プレゼンは4つのパーツで構成
社内プレゼンは「表紙」、「ブリッジ」、「本編」、「アペンディックス」の4つのパーツから構成されます。
シナリオを作成し、プレゼンを短く、シンプルにすることがポイントです。本編は前述の通り、全部で5~9枚で仕上げましょう。あまり多いと聞き手のフォーカスが絞れず、よく分からないプレゼンとなってしまいます。
また、枚数が少ないからといって、情報を詰め込むのはタブーです。
たとえば、1枚のスライドへグラフを2つ載せてしまうと、そのスライドの意味を理解するのが難しくなってしまいます。複数のグラフが必要な場合は、枚数を増やした方が無難です。
スライドを5~9枚にまとめるのには、他にも理由があります。
心理学者ジョージ・ミラーの「マジカル・ナンバー」をご存じでしょうか?
人間が瞬間的に記憶できる情報量の限界は「7±2」であるという説があります。例えば、電話番号や郵便番号をハイフンで区切って表記するのは、そういった人間の特性を生かし、記憶に残りやすくしたものです。
ミズーリ大学の心理学教授であるネルソン・コーワンは、「4±1」こそがマジックナンバーだと述べています。これらのことからも、聞き手のフォーカスが絞れなくなってしまうような大量の情報を詰め込むのは適切ではないということが分かると思います。
表紙は一瞬で議題を伝え、本編は大きく2つで構成
4つのパーツのうち、表紙ではスライド中央に大きく議題を表示します。「これから何について話すのか」が明確でないままプレゼンが進行してしまうと、決裁者に趣旨をつかむまで考えさせてしまうことになり、しばらく何も頭に入って来ないといった状況を作ってしまいます。
中核となる本編スライドは、「現状報告」と「提案」の2つで構成します。特に決裁者向けのプレゼンでは、この2つがあれば十分です。
次にブリッジですが、これは次の課題へ繋ぐ為のスライドです。例えば、「現状報告」、「改善案」など、本編の大きな流れを示すものです。
また、選択肢のあるプレゼンを行う際には、こういった方法で趣旨を分けるとより選びやすくなります。ただし、提案内容がごくシンプルなものであれば、ブリッジは必要ありません。
- 現状報告
どんな課題があるか?その課題が生じる原因は何か?
- 提案
その原因を解消する解決策、その解決策を実施した結果、期待される効果を示します。 加えて、本編スライドの最後には、概要を1枚にまとめたスライド、コスト、スケジュールを追加します。
直接関係のないものはアペンディックスへ
本編スライドに盛り込むことができなかったデータや、本編スライドの補足説明に必要なデータなどをストックした資料集です。
これの使い方としては、プレゼン終了後、決裁者などから出される質問・疑問に回答する時にスクリーンへ映し出します。
万が一、アペンディックスに不備があると、決裁者に「十分な検討がなされていない」、「決裁するには至らない」と感じさせてしまうことがあります。
テーマはひとつに絞る
複数のテーマに渡って一度にプレゼンしようとすれば、伝えなければならない情報が増え、分かりにくくなってしまいます。ですから、「ワンプレゼン=ワンテーマ」に絞るのが基本です。
- 背景
たとえば、カフェを経営する会社にお勤めのあなたは、店舗への来客が減少していることに対する対応策を求められていたとします。
- 課題の洗い出し
「接客接遇の改善」、「店舗のクリンリネス」、「店舗外装の変更」、「什器の入れ替え」などの施策を総合的に進める必要があると結論が出ました。
- テーマが複数存在
考えられるテーマは、接客接遇研修の実施、スタッフに徹底させる清掃ルール、店舗外装のデザインを策定、新しい什器の選定を実施。
- 一度でやり切れますか?
まず、一連の施策を総合的に進める提案を行います。
そのうえで、最優先すべき施策として「接客接遇研修の実施」について承認を受け、その後順次、その他のテーマについてのプレゼンを積み重ねます。
テーマを小分けにすることの効果は、プレゼンをシンプルにするのみならず、着実に自分の陣地を広げていくことができる点にあります。
例題のように施策が多岐に渡る場合、まずは一連の施策を総合的に推進する旨のプレゼンを済ませます。そのうえで、まず優先的にどれかひとつの施策にフォーカスを絞って承認を得て、後日、順次他の課題についてもプレゼンを重ねていきます。
このようにテーマを小分けにしてプレゼンすることにより、それまでのプレゼンで確保した陣地のラインを越えてまであきらめる必要がなくなります。
逆に、あれもこれもと詳細に渡るプレゼンを行ってしまうと、往々にして細部をつつかれる可能性が高くなります。外装デザインはおろか、すべてを否定されて差し戻しされてしまう危険性もあります。
そのほか、テーマを小分けにすることで、スピードが生まれます。詳細をすべて決めてからプレゼンしようとすると実施までに時間がかかってしまい、決裁者の心証を悪くしかねません。都度、検討を進めているという意思表示をすることで、決裁者に安心感・信頼感も生まれます。決裁者にとっては、提案を一度に受けても、それが本当にやり切れるかどうかは不安が残る部分です。
シンプルで明確なロジック
分かりやすいプレゼンとは、シンプルなロジック(論理)で展開されるものです。論理的に考えるコツは、ストーリーに沿って資料をまとめることです。
課題→原因→解決策→効果の4つのプロセスがあり、それぞれが「なぜ?」、「だから、どうする?」、「すると、どうなる?」という言葉で繋がっていることで、よりロジカルなプレゼンになります。
解決策の決定
では、いよいよ解決策を決定します。
「こうすれば、その原因を解消できる」と提案します。
前述の例題でいえば、「指導力を磨くセミナー」、「スタッフの接遇セミナー」、「接客マニュアルの作成・配布」など、さまざまな意見が飛び交います。
その際に、必ず「コスト」と「スケジュール」をワンセットで考えるようにします。できるかぎり精度の高い試算で、費用対効果を具体的に示すことが重要です。
結論と根拠をワンセットで
ロジカルなプレゼン資料を作成する為には、もうひとつ重要なポイントがあります。それは、「結論」と「根拠」をワンセットで提示するということです。そして根拠は、できるだけデータで示さなければなりません。
たとえば、いくつかの選択肢の中でどれかひとつを選んで結論を出すとして、なぜそれが優先なのか、説得力のある根拠(データ)で指し示す必要があります。その為には、過去のエビデンスや統計データ、アンケート結果など、説得力のある実際の根拠(データ)を見せることが重要です。
まとめ
課題→原因→解決策→効果の流れになっていて、且つ、それぞれに根拠が示されているかどうかがポイントです。
この構図が出来上がっていれば、説得力のある資料が作成できると思います。
課題は何か?
なぜそうなったか?<//p>
だから、どうすればいいのか?
すると、どうなるのか?
さらに提案の採択率を上げるには
真剣に提案書を考えれば考えるほど、一つのアイデアにすべてを賭けたくなるものですが、あえて、「A案」、「B案」の2案を提示することで、採択率を上げることができます。
なぜなら、人は選択肢が一つしかないと、「もっといいものがあるかもしれない」と考える傾向があるからです。逆に選択肢を示すと、その中から「より良いものを選ぼう」という思考が働きます。結果、意思決定がポジティブな方向へ働くことがあるのです。
また、2案あることで、それを選択することが正しいかどうかよりも、どちらを選ぶ方がより自分にとって、会社にとって良いかに意識が集中します。
そこで、2案のメリット・デメリットを1枚にまとめて提示することで、よりいずれかを選びやすくします。
絶対に押さえるべき3つの視点
企業にとって最も重要なことは、「本当に利益を生み出すのか?」です。スライドを作りこむ前に、これらのことを必ず押さえておかなければなりません。
また、実現の可能性が低いと思わせてしまっては提案は通りませんし、会社の経営理念と乖離があってもいけません。
- 財務的視点 本当に利益を生み出すのか?
事業を実施する上でのコストを明確に算出します。直接関わる部署へも確認するなどして、精度を高めることが重要です。「概要スライド」で数字が目立つようにしたうえで、必ずアペンディックスへ計算の根拠を入れておくことが大切です。
売上・収益予測はあくまでも予測ですから、確実な根拠を示すことは不可能ですので、説得力が非常に大切です。たとえば、できるだけ公的な市場予測データの活用や、事前にデータを取るための「ミニマム・トライアル」を提案するなどするのが良いでしょう。
- 実現の可能性 本当に現場でうまく回せるのか?
提案する事業に関わる部署や人物へ、事前に確認を取りましょう。実現の可能性や注意すべきポイントなど、自分では気付かなかった思わぬウィークポイントが潜んでいることも多々あります。
- 経営理念との整合性 会社の理念と合っているのか?
どんなに売上・収益が上がっても、経営理念や社是に沿ったものでなければ、会社にとって実施する意義が薄れてしまいます。
だからといって、一社員が経営理念を持ち込んで決裁者へ提示しても、釈迦に説法となってしまいますので、あくまでも自問して経営理念との乖離がないかを確認しましょう。
いきなりスライドをつくらないことが重要
パワポと向き合う前に、まずはスライドイメージを書くことをお勧めします。このような表を作成し、この中にそれぞれの項目を入れてストーリーを組み立ててみます。
インフォグラフィックと書いてある欄には、その根拠や結論をより分かりやすく伝える為に使用する画像や表、グラフなどを入れます。これまで集まってきた様々な情報を一度表へ書き出すことで、頭の中を整理します。やみくもに作り始めるよりも、かなり効率的です。
作り終わったら、上司や先輩へ見せて意見をもらうのはもちろんのこと、関係部署のスタッフを集めてブレストしましょう。
他の人の視点でチェックしてもらうことで、ヌケ・モレをなくし(より良いデータがあるかも)、あらかじめ関係部署のコンセンサスを取ることで、最初から周囲を巻き込んでおくことが大変重要です。
その際に、人数はマジックナンバーの範囲で、さらに時間を限定する(30分など)を意識してみてください。
▼以前の記事をご参考まで。
資料を作成するツールも重要
ほとんどの方がWindows PCでの資料作成の際に、PowerPointやExcel、Wordなどを使っているかと思いますが、私個人としてはGoogleスライドやKeynoteがお勧めです。
いずれも、操作がシンプルで余計なことを考えずに資料を作成できるほか、何よりもデザインがシンプルで美しくカッコよいです。これはあくまでも私の感覚値ですが、PowerPointでプレゼンテーションを作成するのと比較して、資料作成にかける時間が「半分以下」に減ります。
使い勝手の良さという点もありますが、「余計な機能をあきらめる」という視点もあり、資料作りにこだわるあまり、内容よりも外見に凝ってしまう気持ちを極力抑えてくれます。同じように時間とスキルを消費するなら、見た目や機能よりも伝える内容をロジカルでシンプルにすることに注力すべきと考えます。
また、GoogleスライドもKeynoteも、MacでもiOSでも、そしてWindowsでもWebブラウザから無償で利用できるということ(Keynote利用はiCloud経由で一部機能制限あり)があり、デバイスを選ばずにどこでも使える点にも利便性があります。
いいプレゼン資料が作れたら、次は発表の環境を効率化してみましょう。
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社外向けプレゼンテーションについて、どのように作り上げれば、より効果的に自社のプロダクト価値を伝えることができるのでしょうか。これまでの経験から、そのノウハウを冊子にしました。ぜひ、皆様のビジネスにお役立ていただければと存じます。