この記事の目次
いい音とは?
私たちはホテルのバンケットをはじめ、会議室や教室の音響システムの設置工事を行っていますが、そもそもいい音とは何でしょうか?
スピーカーブランド=いい音
高級なシステム=いい音
好きな音=いい音
大きい音=いい音
これらの条件はすべての世界で共通とは限りません。
では、全てにおいて共通する、” いい音” の条件は何でしょう?
それは、「スピーチがちゃんと聞こえること!」
これ以外には、実はないのです。
とある音響の専門家は、「スピーチが聞き取れない音響システムは、音楽を鳴らしてもよくない」とさえ言っていました。
私たちはそんな” いい音” を叶える音響システムを提案しています。
スピーチがちゃんと聞こえること
続いて、「スピーチがちゃんと聞こえること!」が叶う音響システムとは何なのか、もう少し詳しく解説します。
そもそも音響システムとは、マイクやミキサ、アンプ、スピーカーだけを指すのではありません。
例えばスピーチの場合、その「話者」と「話者とマイクまでの空間」、「スピーカーから拡声された音を聞く聴取者」、「その空間(場所自体)」全てがシステムになります。高級な機器を用意すれば“いい音” になるわけではないことを、まずは心得なければなりません。
4つのポイント
私たちが音響システムを設計・設置・調整する際のポイントは次の4つです。
適切な音量(音圧レベル) があること
当然ですが、大き過ぎると疲れますし、小さいと聞こえなくなります。
その会場や使用する内容にあった、聞きやすい音量が必ずあります。
ライブハウスでは会場を盛り上げるため、あえて通常より音量設定を大きくすることも…。最近は、専用の耳栓を販売している所もあるそうです。
明瞭であること
よく、会場内が響きすぎて聞こえないという話を聞きます。
空間の問題もありますが、スピーカーの選定や設置方法(向きや位置)が会場にあっていないケースも存在します。
代表的なNGケースとして、スピーカーが聞き手の方向ではなく、会場後方の壁に向けて設置されていることがあります。設置の際は十分に注意する必要があります。
均一な音場(どの場所でも同じような音量) とすること
音は情報です。前の人と後ろの人で音量が違うことで、情報取得の差が出てしまいます。
聴取者(エリア)に対してどの程度まで均一にさせるかの基準があります。その基準内になるように、スピーカーの配置や調整を行います。
例えば英語のヒアリングテストを行う時に、場所によって聞こえ方が違うと問題です。公平にテストを受けられる環境を作らなければなりません。
ノイズや歪の無い環境にすること
ノイズに関しては、音響システムの影響だけでなく、他の設備や電源、電波など、様々なモノに影響を受けます。対処法はケースごとに異なり、これが正しいやり方と決まった方法はありません。(そのため実際の現場でも、解決までに時間がかかってしまう場合があるのです…)
スピーカーから常に「ジー」といった音が出ていると、聴く側はそのノイズが気になってしまい、肝心のスピーチ自体がアタマに入らないなんてことも…
以上の4 点を満たす環境を作ることで“いい音” が生まれます。
しかし、その環境を作り出すのは簡単ではありません…現地のセッティングにもノウハウが存在します。
セッティングの優先順位
“いい音” を作るセッティングには、優先順位が存在します。1~4まできちんと考えて調整していく必要があるのです。
まずは音が出ること
当たり前のようですが、実は音が出なくて現場でジタバタすることが多々あります。
単純な理由がほとんどなのですが、これが見つからないことも多く…。オペレーションスタッフは音が出ない時、背中にいやな汗がにじみます。とにかく音が出なければ始まりません。
適正な音量で
音が出たら、会場全体で聞こえる音量に調整することです。
音は情報ですので、均等に聞こえなければなりません。小さな音量では聞こえないので、少し大きめに音を出すようにします。あまりにも大きすぎると苦情が出てしまいますが…。
ハウリングを抑える
ひどいハウリングは、大変耳障りです。
マイクの使い方、音量、会場の環境など様々な原因があります。オペレーションスタッフがついている場合は、ボリュームの微調整で大抵は避けることができますが、オペレーションスタッフがいない場合には、どの様に使われるか分からないので、ボリュームを操作されない仕組みにするか、自動でハウリングしている周波数を切ることができる機器を用意するなどの方法があります。
明瞭度の確保、音質を整える
ここまできたら、後は音質調整。
音質が調整されていればハウリングは避けられるのですが、これが実は難しい…弊社のオペレーションスタッフのように、常に会場の状況・環境をみて音質調整をしている場合は良いのですが、そのようなスタッフがいない場合は、平均的な調整になってしまいます。音は室温、湿度、そこに居る人数、服装などによって変化してしまいます。そのためハウリングポイントもその状況で変わるのです。平均的な調整を行うことで明瞭度が十分に確保できていると、ハウリングの心配はほとんどありません。
実際には4→3の順番で作業を行いますが、優先順位は3の方が上位となるので注意が必要です。
私たちは、システム構築でもオペレーションでも同上の優先順位を考えて作業を進め、“いい音”の環境を作っています。
さらに“聞きやすい音” は話者にとって“話しやすい音” にもなるのです。