働き方改革で重要なチームの働き方

働き方改革第二弾

以前、働き方改革に重要な時間管理の方法について、ブログを書かせていただきました。
今回は視点を変え、生産性の高いチームを作り上げるにはどのようにすれば良いかについて、書かせていただきます。

日本の現状

労働生産性と生産能力との比較

今、日本の労働生産性は非常にもったいない状況に立たされています。

日本の現状分析グラフ

これらのグラフから読み解けることは、世界的に「生産性が低い」という現状を突き付けられながらも、労働者の「能力は高い」という矛盾を抱えているという事実です。ここに隠れている本質は、日本には平均的に高い教育水準があるのに、社会がそれを十分に生かし切れていないということだと考えます。
つまり、 「生産性の向上」、「エンゲージメントの向上」を図ることで、日本企業の競争力はまだまだ伸びるかもしれません。

生産性向上に必要な改革とは

次のグラフは、国内の有力企業経営層へ実施した「生産性向上のために自社で対策が必要な項目」のアンケートの結果です。

生産性向上に必要な改革に関するアンケート結果

※知的生産性研究所 有力企業経営層へのアンケート結果


特に意見が多かった上位3つの項目は次の通りでした。


  1. 社内コミュニケーションの向上

  2. イノベーション力向上

  3. 社員の成長

つまり、経営層の思いは、変化が激しい経営環境に対応し、厳しい競争の中で生き残れる組織を実現することであると考えることができます。そのために必要なことは、次のようなことではないかと思われます。


  1. 垣根を超えたコミュニケーション

  2. イノベーションを生む風土改革

  3. 社員の自立性

以下ではこれらを踏まえて、このような風土を醸造していくためにぜひ、チャレンジしてみていただきたいことを書かせていただきました。

生産性の高いチームを作る

まず、生産性の高いチームを作るために欠かせないこととは、どんなことか考えてみましょう。
たとえば、以下はよくあるチームとしての生産性が低い例です。

無関心

直接自分に関りがなければ、お互いのしている仕事にはあまり関心がない。

待ちの姿勢

他のメンバーの仕事が進まないと自分はやることがない。

怠ける

各々が自分の仕事をしているので、プロジェクト全体の進捗はチェックしない。


その逆を考えた場合、生産性が高いチームの条件とは。



  1. プロジェクトを進行するうえで、お互いの影響を強く受ける

  2. 個々のテリトリーの問題を解決するために、進捗確認をしながら意思決定できる

  3. プロジェクト達成のために、チームメンバーが互いの力を必要とする


つまり、チームにとって重要なことは、誰がチームのメンバーであるかよりも、個々が能力を出し合い、どのように協力しあってプロジェクトを進行していくかということであるといえます。

チームの心理的安全性

「チームの心理的安全性」は、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・C・エドモンドソン教授が1999年に提唱した概念です。
この概念を「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義しています。
その後、グーグルが約4年もの年月をかけて実施した大規模労働改革プロジェクト「プロジェクトアリストテレス」により、「チームを成功へと導く5つの鍵」が発表されています。今回はこれらを元に、生産性の高いチームの作り方を考えていきます。
参考 「効果的なチームとは何か」を知るGoogle re:Work

心理的安全性が守られていない例

それでは具体的に、心理的安全性とは何を指すのでしょう。たとえば、以下はよくある心理的安全性が守られていない例です。

  • ミスをするとたいてい非難される

  • お互いの課題や問題には目をつぶってしまう

  • 自分と異なる他者を拒絶することがある

  • チームにリスクのある行動をすると非難される

  • 他のメンバーに助けを求めることが難しい

  • 誰も自分の仕事を意図的に貶めるような行動をしない

  • メンバーで仕事をする際に、自分のスキルと才能はあまり必要ないと感じる


いかがでしょうか。弊社でもよくある場面が含まれていると思いますが、チーム内にこういった空気があるという会社は多いのではないでしょうか。

チームを成功へと導く5つの鍵とは

①心理的安全性(サイコロジカル・セーフティー)

忌憚ない意見

心理的安全性とは、リスクある行動をとることを安全だと感じ、お互いに忌憚ない意見を言い合える。失敗を恐れない状態のことをいいます。

 

たとえば、誰でも人から「あいつはあまり賢くないな」とか、「あいつはいつもネガティブなことばかり言う」、「邪魔をしようとしているのか」などと思われたくはありません。相手がどう受け取るかによって、人はポジティブにもネガティブにもなるということです。

②相互信頼

相互信頼

チームメンバーがクオリティの高い仕事をしてくれると信頼できている状態です。特にクライアントのことを考えている人ほど、メンバーの仕事のクオリティに信頼がなければ、安心して仕事を任せることはできません。

③構造と明確さ

目標・計画

役割、計画、目標が明確になっており、そのプロセスが明確になっていること。メンバーがもたらす成果について、個々が理解している状態。

④仕事の意味

達成感

その仕事が自分にとって意味があることだと感じている。つまり、達成感が得られているかどうかです。いくら会社のためと言われても、自分自身にメリットを感じられなければ、プロジェクト達成への意欲は向上しません。

⑤インパクト

インパクト

自分の仕事には意義があり、チームにより良い、高い次元での変化をもたらすと感じていること。つまり、チームの役に立っているという思いです。

心理的安全性を高める方法とは

チームの生産性向上のために、心理的安全が必要であることはお分かりになったかと思いますが、具体的にどのようにすれば高めることができるのでしょう。エイミー・C・エドモンドソン教授はTEDx Talks でのスピーチの中で、個人にできる簡単な取り組みとして次の3点を挙げています。

チームメンバー個々ができること

①仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える

失敗ありき

すべてを失敗ありきとして捉えるということです。たとえ致命的な失敗であったとしても、それを非難するよりも「この程度の失敗で済んだではないか」と考え、そこから今後失敗しないメソッドを学ぶことの方がずっと大切なことです。

②自分が間違うということを認める。

認める

自己の過ちを認めない限り、失敗から学ぶことはできません。自己防衛の小さなプライドは生産性を生み出しません。自己の過ちを素直に認め、それによってリベンジすることの方に大きなプライドを持つべきです。

③好奇心を形にし、積極的に質問する。

好奇心

相手の発言や考えに対して、好奇心ある質問をすることです。自分と異なる意見を否定するのではなく、相手の考えを理解しようと努め、自己と異なる考えに敬意を払うことです。
たとえば、「その考え方いいね。僕にはできそうにもないことだけど、もっと詳しく教えて」など、こちらから相手に頼る姿勢を見せることで、積極的に議論を交わすことができるようになります。最初に否定してしまってはそうはいきません。

マネージャーやリーダーができること

①積極的な姿勢を示す

積極的

会議中、目の前のことに集中します。また、自分もメンバーから学ぼうとする意欲を持って、質の高い質問をすることです。

②理解していることを示す

理解する

相手の内容を要約し、オウム返しします。また、その中で同意できる点、できない点を示し、率直に意見交換を行います。そのうえで、話の内容を理解したことを言葉で示します。この際に、決して不愉快な表情をしないことです。

③対人関係において、相手を受け入れる姿勢を示す

受け入れる

まずは自分を知ってもらうために、仕事の進め方や好みをメンバーに伝え、メンバーにも同じように、自身のやり方を皆に伝えるように促します。定例外のミーティングを行う際には、必ず会議の目的を伝え、参加を促すようにします。チームメンバーとは仕事以外の話をする時間を割き、「あなたのことをちゃんと気にしているよ」と友好的な態度を示します。
また、チームメンバーが貢献してくれた際には、感謝の意を示すことが大切です。メンバー同士が誰かの陰口を言うようならば、一緒になってそのメンバーを否定するのではなく、自分が感じるそのメンバーの良いところを皆に提示してあげることも大切です。

④意思決定において相手を受け入れる姿勢を示す

意思決定

メンバーには意見やフィードバックを求め、メンバーの話を妨げず、妨げようとする人をたしなめましょう。また、意思決定の際には、意思決定の背後にある根拠をメンバーが納得するように説明する義務があります。

⑤強情にならない範囲で自信や信念を持つ

信念を持つ

チームでのディスカッションが効果的になるようコントロールすることが大切です。自分の意見に異論があるメンバーには、積極的に発言してもらいましょう。また、仕事や失敗に関する自分の個人的な考え方をチームメンバーに伝え、チームメンバーがリスクを取るように自己の背中を見せます。加えて、チームの成果を上長に伝え、メンバーの功績を対外的に認めさせることが大きな自信とモチベーションに繋がります。

目標を明確にする

これらのことを実施し、その効果を可視化するためには、以下のように相互評価、期間評価ができる効果測定環境が必須といえます。


  1. マネージャーによる評価

  2. チームリーダーによる評価

  3. チームメンバーによる評価

  4. 四半期ごとの成績評価


このように、相互で目標とその結果を可視化する管理手法と言えば、KPIやMBOが有名ですが、これらに変わり、近年注目されている新たな目標管理手法が「OKR」です。今回はそれを中心にご紹介していきたいと思います。

OKRとは

「OKR」はGoogleやIntelといったグローバル企業が導入し、爆発的に広まったフレームワークです。実際に導入したことで大きな成果を上げ、今や誰もが知る有名企業へ成長したという事例もあります。
OKRツールとは、「Objectives and Key Results」の略語です。私なりに要約すると、目的とその目的に対してインパクトを持つ成果指標を可視化するツールということです。
以下は、OKRの”O”目的とOKRの”K”重要な成果の関係性を示したものです。例題のように、目的を達成するために的確な目標を定め、その成果基準を定量的に表すように設定します。

OKRの目的と成果

OKRはひとつのチームのみで実施するよりも、全社的に実施する方が効果が見込めます。


一気通貫

会社の目的、それを達成するための目標、成果を全社的にオープンにすれば、自分の立場やポジショニングが可視化されるので、自分の目標が会社の目的につながっていることを認識することができるようになります。

これにより、会社の目的を達成するために必要な戦略を、チーム別、個人別に推進していくことができるようになります。これは隣のチームが何をしているのかに興味を持つことにも繋がります。

目標設定のポイント

会社の目的を達成するためには、それを達成するための目標の設定が大変重要です。これがリンクしていないと、最終的に個々が目標達成を成し遂げたとしても、それが会社の目的達成に繋がらなくなってしまいます。以下はその重要な設定を行う際のコツです。
また、目標はチームとして実現が可能な範囲で、期限を明確にし、チャレンジングなものを設定します。分かりやすく表現するのであれば、「ワクワクできるような高い目標」を設定します。

①目標は3~5個に絞る

高揚しすぎ

目標を作っている最中は、心が高揚し、モチベーションも高くなっています。この高揚感を未来に投影しているため、無理な目標も無理に思えなくなるという錯覚を起こします。まずは目標を絞ってみて、その上で実際にやってみて、難しいならハードルを下げることが大切です。この際に、実際に達成できたことは貴重な経験として残り、今後新しいことへチャレンジする際のネガティブな感情を払拭するための根拠となり得るのです。

②抽象的な表現は使用しない

高みを目指す

目標に「続ける」、「維持する」、「継続する」など、抽象的な表現を使ってしまうと、その言葉の裏に逃げ道を作ってしまうことに繋がります。ここが明確でないと、客観的な評価もしづらくなってしまいます。

③到達点や状態を示す表現を使用する

状態を示す

目標には「~を実現する」、「~に到達する」など、到達点や状態を示す表現を使用します。日本語には癖があり、物や出来事の境界線のようなものをやんわりとぼやかします。そして、最終的な状態や結果よりも、その過程の方を重視してしまいます。これは集団を尊重してきた日本文化の影響によるもので、英語圏が個人を尊重し境界線をはっきりさせようと考えることに対して、真逆の考え方です。この考え方を目標に適用してしまうと、”個々の結果はあいまいで良い”という感覚にもなり得るのです。

④具体的、客観的、明確な言葉を使う

客観的

客観的とは、第三者から見た事実です。相互に共有し、可視化する目標を作り上げるわけですから、これらは客観的で、他の方から見ても理解しやすく、具体的、且つ明確な言葉でなくてはいけません。

成果指標のポイント

OKR成果指標の最適な達成率は60~70%です。成果指標は必ず数値で示せる定量的なものを設定し、もしも達成度合いが高すぎれば、目標が低すぎ、低すぎれば目標が高すぎると判断し、その時点で成果指標の修正を図ります。
そもそも、OKRは実績を評価する為のツールではなく、個人がどのような仕事に注力していたかを明確にし、貢献度を見えるようにすることが目的です。
また、四半期ごと、1年ごとに評価し、全社共有します。業種によっては、月ごとに行う組織も存在します。また、四半期中であっても、中間地点でグループ内すべてのレベルを検証し、最終的な評価へ向けて準備を進めるようにすることがベストです。
成果指標設定の際に、注意すべき点は以下の通りです。

  1. ひとつの目標につき、指標は3つ設定する

  2. 計測可能な指標で、実現することで目標達成に直接結びつくこと

  3. 行動自体ではなく、行動の成果を定義する

  4. 何を持って完了とするかを明確にする

  5. 達成の証拠は信頼性があり、容易に見つけられるものであること

イノベーションを生む風土改革

企業が目的を達成するための手法としては、古くからKPIが使われてきました。
私個人は、過去に「シックス・シグマ」を使用する企業に在籍しておりました。シックス・シグマは元々、品質を高めるためのフレームワークでしたが、この企業ではBSCの概念を組み入れ、経営全体のマネジメントを高めるためのツールとして活用していました。私は今でもその考え方で目標と成果指標を整理するようにしています。
目標を達成するために決められた指標を計測するという意味では、OKRもKPIも違いはないように思われます。

では、これらの手法とOKRの違いとは一体何でしょう。
まず、手法的な違いでいえば、KPIはKGI(重要目標達成指標)といった、定量的な目標に絞ってたてるためのフレームワークであるのに対して、OKRはできるだけ大きな目標(イノベーションの実現)へ向かうために、まず定性的目標を立て、それに対する定量的指標も、60~70%の達成率で考えるように作られています。いろいろなフレームワークが存在するなかで、何を選択すれば良いかは悩みのタネかもしれません。
そこでたとえば、次のように様々なフレームワークをハイブリッド活用するプロセスが考えられます。


STEP.1
ビジョンを策定

組織としてはBSC(バランス・スコアカード)を使って、「財務の視点」、「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」、「人材と変革の視点」の4つの視点で経営ビジョンを策定します。


STEP.2
経営指標

経営指標としてはKPIを設定し、定量的な業績評価を実施します。


STEP.3
チーム戦略

チームの戦略実行とプロジェクトの目標達成のためにはOKRを使い、イノベーションを生み出す風土を作り上げます。



最後に、働き方改革の実現において、イノベーションを生む風土改革を推進することは大変重要であると考えています。そのために重要なことを要約すると、次の通りです。


  1. ビジョンの共有
    組織の方向性を誰もが認識できるようにする。

  2. 自主性
    可能な限り、従業員自身が仕事を定義出来るようにする。

  3. 内発的動機付け
    学習意欲の高い、知識欲旺盛な人材を雇う。

  4. リスクテイク
    従業員が心理的安全性を感じられ、リスクを恐れずに新しいアイデアを試せるようにする。

  5. つながりとコラボレーション
    従業員が仲間を見つけやすく、協業しやすい環境を作る。多様性のあるメンバーが集まることが重要。

日本は先進国の中でも中小企業の割合が多く、それぞれが思いも寄らないイノベーティブなプロダクトを持っていたりします。それともうひとつ、グローバルでも高い評価を受けているサービス産業の強いメソッドがあります。
意外にもこの2つの成功事例から見えてくるメソッドは、前者においては、「多様な個性を発揮しやすい組織があちらこちらに点在している」ということ、そして後者が、サービス産業には「顧客やマーケットの変化に対してスピードを持って対応できる柔軟な組織が多いこと」の2つではないかと思うのです。ならば、なぜ多くの企業がイノベーションの弱さやコミュニケーションの悪さに悩んでいるのでしょうか。私は、実はそこに企業が改革すべき本質が眠っているのではないかと思っています。

働き方改革において、生産性の高いチームを作り上げ、イノベーションを達成するために、ぜひ、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。

次回の働き方改革シリーズは、上記のような組織を実現するためのひとつのヒントになるであろう「デザイン思考の作り方」というテーマで、社内実施するワークショップの様子をアップする予定です。ご期待ください。

▼デザイン思考ワークショップのレポートです。

▼働き方改革を時間の管理という視点で解説しています。

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