東京ジャイアンツタウンの中核施設「ジャイアンツタウンスタジアム」(Gタウン)では、最新の音響設備により迫力と臨場感のある観戦体験を楽しむことができます。クリアな音を全席に届けるための工夫と、直感的に操作できるシステムを導入。球場演出担当者と場内アナウンサーのリアルな声を交え、導入の効果を紹介します。
この記事の目次
施設概要

施設名: ジャイアンツタウン スタジアム 様
所在地:〒206-0812 東京都稲城市矢野口3228番地南山95街区1号
公式HP(外部リンク):https://tokyo-giants-town.yomiuriland.com/
導入の背景
新球場の建設に向けて設備計画が進む中、運用面まで踏み込んだ提案が必要とされ弊社にご相談をいただきました。
現場の実情や日々の運用を丁寧にヒアリングしたうえで、「使いやすさ」「音の質」「将来的な運用のしやすさ」に重きを置いた提案を行い、その内容をご評価いただき、今回のシステム導入を担当させていただくこととなりました。
当社からの提案
今回の音響システム導入では、運用面・コスト面・将来性までを見据えた設計・機器選定を行いました。
本事例では以下の5項目を重要視し、最適なご提案に努めました。
運用面からの提案
「誰でも扱える?操作ミスが心配…」ー 誰でも使える仕組みづくり
システムは操作者のスキルに応じてカスタマイズ可能で、普段の運用ではシンプルな操作に特化!
音響の専門知識がなくてもスムーズに業務が行えるよう構成しており、必要に応じてプロスタッフが初期設定や音響調整をサポートします。
「ちゃんと聞こえる?音がこもったりしない?」ー 音質問題の解決
高音質で自然な音の広がりを実現する同軸スピーカーを採用。さらに非対称拡散技術により、前列から後方まで均一な音質を確保。屋外設置に考慮し高耐候性機材を用いて、長期間の使用にも耐えられます。
コスト面からの提案
「本当に必要なものだけにしたい」ー 予算の悩みにも配慮
必要十分な性能を持つ機器に絞った構成とし、将来的な拡張性も考慮しつつ、初期導入コストを抑えてご提案!
日常的な音響運用においては専門オペレーターが不要なため、人件費の削減にも寄与します。
将来展開を見据えた提案
「壊れたらどうしよう…」ー 信頼性と保守性も万全に!
トラブル時の原因特定がしやすいネットワーク構成で、スムーズな復旧が可能。
さらに、ホコリや熱から機器を守る環境設計で、長期間安定して使えるシステムをご提案しています。
「あとから機能追加できる?」ー 将来も見据えた柔軟設計
将来的に音響全体をネットワーク化することを見据え、拡張性を持たせることで、段階的なシステムアップに対応。
アナウンス、マイク、モニター音声、インカムなど、すべての音声信号を一元管理する設計に対応できるようにしており、将来的な統合にもスムーズに!
導入システムについて
観客の環境に寄り添ったスピーカー設計
今回の導入では、単に「音を鳴らす」ことを目的とするのではなく、それぞれのエリアや利用者にとって最適な音環境をつくることにこだわりました。
音の届き方や聞こえ方は、位置や周囲の環境によって大きく異なるため、スピーカーの種類や配置、設置方法を細かく調整しています。
屋外施設では、音が想定外の方向へ飛びやすいため、近隣への音漏れ対策が重要です。
その為今回は、スピーカーを雨風を防ぐボックス状の筐体に格納し、音の指向性をコントロール。
スタンド内にしっかり音を届けつつ、場外には極力音が漏れないよう設計しました。
この筐体は、屋外使用に耐えうる防滴・防塵仕様となっており、風雨や湿度の影響による音質の劣化や機器の故障も防ぎます。

グラウンドに最も近い位置で試合を観戦できるエキサイトシートは、Gタウンならではの臨場感を味わえるエリアです。このシートの特性を最大限に活かすため、一般席とは異なる音響設計を提案いたしました。
高音質・高出力のスピーカーを専用に選定し、プレーの音やアナウンス、BGMがよりクリアに、そしてダイナミックに届くよう設計しています。試合と音が一体化することで、観客にとって印象深い体験になるよう音響面からサポートしました。

球場のように広い空間では、スピーカーから発せられた音が観客に届くまでに距離に応じたタイムラグ(遅れ)が発生します。Gタウンの場合、ホームベースからセンターまで122mあり、音が届くのに約0.36秒かかる計算になります。この“わずか0.36秒”の差が、試合中のアナウンスやBGMの聞こえ方に大きな影響を与えることがあります。
豆知識:0.36秒のズレってどんな感じ?
0.3秒を超えると、人の耳にはっきり「遅れ」として感じられます。
たとえばアナウンスで「○○選手!」と呼びかけると、外野席では「○○選手…選手…選手…」と、輪唱のように重なって聞こえることがあります。ほかにも、BGMがにじんで聞こえる、拍手がバラついて聞こえるなど、さまざまな違和感が生じます。
そこで今回の音響設計では、各スピーカーの出音タイミングをミリ秒単位で細かく調整。
どの座席にいても音が自然に聞こえるよう、距離に応じてディレイ補正を施すことで、会場全体の音の統一感と快適な聴こえ方を実現しました。
誰でも簡単操作!タブレット端末での制御システム
「誰でも直感的に操作できること」を重視した音響制御システムとして、タブレット端末からスピーカーやマイク、BGMなどを一元操作できる仕組みを構築しました。
・各スピーカーの出力設定・音量調整
・マイクのON/OFF、音量設定
・CDやSDに保存されたBGM
・効果音のポン出し操作
・映像音声の音量管理
・鳴動中の設備のステータス表示
画面のアイコンやレイアウトは、使用者のレベルに応じてカスタマイズされており、複雑な音響知識がなくても安心して使用できます。また、操作の流れを簡単に確認できる「簡易取り扱い説明書」もあわせて提供しており、初めて触る方でもスムーズに使いこなせるよう配慮しています。
日常的なイベントやアナウンスの運用時も迷わず操作できるよう、操作手順を簡略化しました。

アナウンス室と審判とのコミュニケーションについて
Gタウンのスタジアム音響操作室は、3階フロアに設置されており、試合中に審判と場内アナウンサーとのコミュニケーションが困難になるという懸念がありました。
そこで、グラウンド内に審判用と場内アナウンサーが会話できるマイクを設置し、両者間のコミュニケーションが円滑に行えるように音響設備を整備しました。これにより、試合中の連絡や確認事項もスムーズに対応できるようになり、運用面の安心感も大きく向上しています。
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担当者コメント
Q1.導入前に感じていた課題や不安点はありましたか?

以前のスタジアムではスピーカーがスタンド上にしか配置されていませんでした。
また、音量調整が全てのスピーカーで一括になっていたので、グラウンドにいる選手に音楽を聞こえやすくするためには、音割れするくらいに大きな音を出す必要がありました。そのため、スピーカー近くにいた来場者の方は不快だったと思います。
Q2.当初不安に感じていた点が、導入後どう変わりましたか?

スピーカーごとに出力調整ができるので、使用ニーズにあわせてコントロールできることになったのはとてもメリットです。
Q3.日々の管理業務の中で、助かっていると感じる点があれば教えてください。

「ザ・球場」の音響設備しか使ったことがなかったので、タブレットでのコントロールは非常にやりやすいです。
また、こちら側のニーズにあわせて、細かな操作ができるようにと、担当者の方がヒアリング&設定してくれたのでとても助かっています。

既存の設計図を軸にしながら、実際の運用や使用環境を想定し、弊社なりの視点でアレンジを加えてご提案しました。
現地でお客様から「スピーカーの音がきれいによく聞こえる」と声をかけていただいたのは、とても印象に残っています。また、選手がグランド内でBGMを聞いて楽しそうに練習できていることで、グラウンド内にもきちんと届いていることを確認できました。
私たちは、基本を押さえながらも「もっとこうしたい」というご要望に柔軟に応える姿勢を大切にしています。「他で見たことないけどやりたいことがある!」「こんなことできないの⁉」といったご相談も大歓迎です。まずはお気軽に声をかけていただければ、現場に合ったベストな提案を一緒に考えていきます。
当社はスポーツ施設や屋内・屋外を問わず大規模空間においての音響システム提案が可能です。
設備の導入・更新を検討されている方は、こちらのフォームからお気軽にご相談ください。