かねてよりお付き合いのある大井競馬場様の業務放送設備・非常放送設備を更新しました。
放送室や防災センターのあるL-WINGを中心に、音声卓やリモコンマイク、配線の更新を担当。長いお付き合いの中で熟知した、競馬場ならではの仕様を反映し、システム構築や施工を行いました。
この記事の目次
施設紹介
大井競馬場様
大井競馬場様は東京都品川区に位置する地方競馬最大規模の競馬場です。
1950年のオープン以来、「東京シティ競馬(TCK)」の愛称で親しまれています。
所在地:東京都品川区勝島2丁目1−2
公式HP:https://www.tokyocitykeiba.com/(外部リンク)
導入の背景
業務放送・非常放送設備を更新したL-WINGは2003年の竣工時に同設備を導入。2003年以前に納めた設備も含めて、20年以上に渡ってメンテナンス・更新を担当し、長年の実績から厚い信頼を寄せていただいています。
古くなった業務放送・非常放送設備の更新にあたり、大井競馬場の担当者様と打合せを重ね、旧システムでは操作・対応が難しかったことも実現できるよう、設備更新を行いました。
業務放送設備 システム概要
音声信号伝送イメージ
業務放送設備 一覧
放送室
・音声操作卓 1式
・実況用リモコンマイク 1式
・ファンファーレ隊用小型ワイヤレスマイク 7式
・ファンファーレ用機器収納ワゴンラック 1式
・制御架 1式
・大型ビジョンモニター用屋外旋回カメラ 1式
投票本部
・リモコンマイク 1式
・自動放送用リモコン 1式
・放送表示盤 1式
・業務アンプ設備(機器収納ワゴンラック) 1式
委員長室、警戒本部、裁決室、決勝審判室
・リモコンマイク 各1式
内馬場アンプ室
・内馬場イルミネーション用
スピーカー制御装置 1式
防災センター
・業務放送架 8架
一般的な業務放送設備とは異なる、競馬場ならではのシステム仕様
レース運営を止めないための予備システム
大井競馬場様の業務放送設備では、操作部・制御部を二つずつ導入しています。これは万が一トラブルが発生した時、音声の停止によりレース運営に影響を与えないためのバックアップです。操作部・制御部だけでなく光回線も二本のケーブルを敷設しています。
業務放送設備にはリモコンマイクの音声だけでなく、業務放送以外の音声や他の競馬場の音声・情報を受け取り拡声する仕組みが含まれています。設備更新にあたっても、全ての音声を正しく拡声できるよう、施工・調整を丁寧かつ着実に行いました。
通知ボタンでの意思疎通
放送室と各部屋は「通知ボタン」を使ってコミュニケーションを取りながら放送を行っています。これは通常の業務放送設備とは大きく異なる点です。
レース開催時、放送室の担当者が“どの部屋の音声を拡声するか”の決定権を持っています。通知ボタンを使用することで、放送室から「放送可」の意思表示や、各部屋から放送室へ「放送したい」という指示出しが可能になります。
リモコンマイクも「放送可」の状態では搭載されたランプが青く点灯し、視覚的にも判別できるようになっています。
システム納入時には、音声が拡声されるかだけでなく、この通知システムの動作もあわせて確認しています。テレビ放送にもこのリモコンマイクを通した音声が流れるため、「音が出ない」というトラブルは絶対に避けなければなりません。定期点検も当社が担当しているため、常に緊張感をもって設備運用のお手伝いをしています。
旧システムを踏襲しながらも、操作性を向上
音声信号のデジタル化
放送室の音声卓と業務放送架間を光ケーブルに引き直し、デジタルオーディオネットワーク信号規格(Dante)に対応するシステムを構築しました。
これによって多くの信号を制御可能になり、放送室音声や他の部屋の音声を細かくモニタリングできるようになりました。また100回線のスピーカーのON/OFF制御や、将来的に音の出力を増やしたいという要望にも応えることが可能です。
業務放送の制御部となる音声操作卓をリニューアル
什器を特注し、多くの機器を搭載した音声操作卓を作り上げました。基本的には旧システムと同じ使い方ができるように設計していますが、使い勝手を向上するべく細かな改善も行っています。
沢山の機器が詰め込まれた音声操作卓ですが、書類を見ながらの放送を想定し手元のスペースを開けたレイアウトになっています。
新設したタッチパネルの上にもアクリルカバーが据え付けられており、マイク自体もケーブルを引き出して位置を動かせる仕組みになっているため、作業スペースとして広々と使用することができます。
競馬場内にはテレビ局等の収録スペースがあり、放映や収録時に音を止めたいというご要望がありました。各棟のエリア単位でスピーカーのON/OFFを切り替え可能にし、全てタッチパネルで操作できるようにシステムを構築しました。特定のエリアだけでなく、合計100回線のON/OFF操作を実現しており様々なシーンでの活用を想定しています。
以前は馬場入場のモニタリングカメラとTV室からの映像の2台だけで運用していました。今回の更新で、オーロラビジョン用のモニタリングカメラを1台、運営本部からの映像用を2台増設し、あわせて5台のディスプレイで運用できるようにしました。このために、オーロラビジョンを映すためのカメラ設置も当社で行っています。
リモコンマイクを使う担当係員の声量や、その時の状況に応じて放送室で各音声のボリューム調整を行います。更新前は小さなつまみを回しての操作でしたが、誰にでも操作しやすいようフェーダー操作へと変更しました。
防災センターと放送室にノートPCを導入し、放送室にあるデジタルミキサーの主装置を遠隔操作できるようにしました。このPCを操作することで、放送室の担当者が対応できない時には、防災センターからも音声の入出力調整が可能です。
非常放送設備
非常放送設備はL-WINGの防災センターと委員長室、4号スタンドの電気室に納入しています。
大規模施設向け非常放送設備を採用。デジタル化による省スペース、省電力を実現しました。
競馬場全域をカバーし、的確な避難誘導放送及び自動火災報知機からの連動自動放送も可能になりました。
非常放送設備 一覧
防災センター
・非常放送架 5架
・非常放送遠隔操作器 1式
委員長室
・緊急放送用リモコンマイク 1式
4号スタンド 電気室
・非常放送遠隔操作器 1式
お客様の声
競馬開催という特異性をご理解いただき、限られた時間で作業工程を終えられるよう、綿密に事前打合せをさせていただきました。結果、無事安全に設備更新を行うことができました。
特にスピーカーの出力切り替えは、旧システムでは建屋単位でしか出来ませんでしたが、新たにより細かい出力選択が可能になり、運用者の利便性が向上しました。
業務放送・非常放送設備だけでなく、音・光・映像に関わることは電音エンジニアリングにお任せください!
場所・利用方法などをお伺いし、お客様ごとに最適なシステムを提案いたします。