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イベント業界は、現在大きな転換期を迎えています。デジタル技術の活用(DX)と参加者の満足度向上がイベント成功のカギとなる中、単なる情報発信や商品紹介だけではなく、いかにして参加者に特別な体験を提供出来るのかが求められています。
例えば、新製品発表会のような重要なイベントでは、参加者が「ただ見る」だけでなく「体感し、感動し、記憶に残る」体験を提供することが成功のポイントです。限られた予算の中で、どう印象的な「体験価値」を創出するか。その具体的なアプローチを探ってみましょう。
この記事の目次
製品発表会が変わる!時代の転換点
イベントで“体験価値”が効く理由
体験価値とは、参加者が製品やサービスを通じて得る「感情・認知」的な価値のことです。従来のイベントが「情報を伝える」ことに重点を置いていたのに対し、体験価値を意識したイベントは「参加者の心に響く体験を創出する」ことを重点としています。
この概念が重要視される背景には、現代の消費者行動の変化があります。単純な機能説明やスペック紹介だけでは差別化が困難な時代において、「どのような体験を提供できるか」が製品・サービスの価値を左右する決定的要因となっています。特に製品発表会では、参加者が製品に対して感じる第一印象が、その後の購買意思決定に大きな影響を与えるため、戦略的な体験設計が不可欠です。
体験価値を構成する5つの要素
体験価値は以下の5つの要素から構成されています。
視覚、聴覚、触覚など五感に訴える演出により、製品の魅力を直感的に伝えます。人間の脳は論理的思考よりも感覚的な情報を優先的に処理するため、第一印象を決定づける最も重要な要素です。
例えば、スマートフォンの発表会では製品の薄さや美しさを強調するエッジライティングにより、参加者が「触ってみたい」という欲求を視覚的に喚起することができます。
驚き、感動、興奮などの感情は、参加者の心に深く印象を残します。こうした感情体験は、記憶の定着率を高めるだけでなく、イベント後の口コミや推奨行動にもつながります。
例えば、ブランドの歴史や価値観を、光の動きや色、音楽などで表現することで、参加者の共感をより深めることができます。
新しい発見や学びを提供することで、製品への理解を深めることは重要です。現在では、AR/VR技術を活用した製品デモンストレーションや、分かりやすい映像解説などが効果的です。特にBtoB製品の場合、複雑な機能や技術仕様を理解してもらうことが重要であり、従来のパワーポイント説明では限界があります。立体的な映像演出により製品の内部構造や動作原理を視覚化することで、参加者の理解度を格段に向上させることができます。
参加者が能動的に行動できる機会を提供することで、イベントへの関心や満足度を高めることができます。インタラクティブな展示やデジタルスタンプラリーなど、参加者自身が体験の主人公になれる仕組みを取り入れることで、「見る」だけの受動的な体験から「参加する」体験へとつなげることができます。さらに、参加者が自分のペースで情報を得られる環境を整える仕組みをつくり、より深くイベントを楽しんでもらうことも鍵となります。
現代のマーケティングにおいて、個人の体験が社会的なつながりを通じて拡散される効果は計り知れません。他の参加者やブランドとのつながりを生み出すことで、コミュニティ全体に一体感が生まれます。そのためには、共有体験やSNSでのシェアを促進する演出が重要です。
イベント体験を自然とコミュニティに広げる仕組みを構築することで、ブランドの認知度向上と顧客ロイヤリティの形成を同時に実現することが可能です。
具体例から見る体験価値の違い:新型スマートフォン発表会の比較
重要なのは、これらの要素を単独で活用するのではなく、複数の要素を統合的に組み合わせて相乗効果を生み出すことです。
そこで今回は、従来の製品発表形式と体験価値を重視した発表形式を、新型スマートフォンの製品発表をイメージして比較してみます。
同じ会場・同じ持ち時間でも、演出設計次第で「参加者が得る体験」がどれほど変わるのかをご覧ください。
BEFORE(従来の発表方法)
会場 | ホテルの会議室 (定員100名、長方形レイアウト) |
照明 | 天井の白色蛍光灯で会場全体を均一に照明 |
音響 | 壇上のマイクとスピーカー1台のみ |
映像 | 壇上のプロジェクター1台。 (パワーポイント投影) |
座席 | 講演会形式で全員が壇上を向く一方向配置 |
時間 | 60分(説明45分+質疑応答15分) |
AFTER(体験価値重視の発表)
会場 | ホテルの会議室 (定員100名、長方形レイアウト) |
照明 | LED照明システムなどの舞台照明 |
音響 | ラインアレイスピーカーシステム、 ワイヤレスマイク、音響ミキサー |
映像 | LEDビジョン、リアルタイム映像合成システム |
座席 | 円形配置、各席にタブレット設置 |
時間 | 60分 (体験型プログラムを含む製品紹介45分+質疑応答15分) |
BEFORE
白色蛍光灯の会議室でテーブルの上にスマートフォンを展示。製品の薄さや美しさが平坦に見え、「普通のスマートフォン」という第一印象。
AFTER
会場が暗転し、製品の輪郭だけが白い光で浮かび上がるよう照明を置くことで、製品の薄さと洗練されたデザインが強烈に印象に残る。
BEFORE
司会者が「CPU性能が30%向上しました」と数値を淡々と読み上げ。参加者は情報として理解するが、特別な感情は生まれない。
AFTER
開発秘話の語りとともに、照明が暖かなオレンジから希望のゴールドに変化。開発映像が背景に流れ、参加者が自然に前のめりになる。
BEFORE
パワーポイントで「AI処理チップ搭載」の文字を表示。
参加者は「AIが入っているんだな」程度の理解。
AFTER
スクリーンにCPU、カメラモジュールが立体などの内部構造を立体表示。説明に合わせて該当部分に光を当てることで、「なるほど、そういう仕組みか!」と直感的に理解。
BEFORE
質疑応答で数人が質問するが、大部分は座ったまま受動的に聞くだけ。製品に触れる機会も限定的。
AFTER
各席のタブレットでARアプリを操作し、新機能を疑似体験。参加者全員が能動的に参加し「これは面白い!」と発見の喜びを体感。
BEFORE
参加者同士の交流はほとんどなく、イベント終了後は静かに退場。SNS投稿も「発表会に参加しました」程度。
AFTER
感想をスマートフォンで回答すると「革新的」「美しい」などの言葉がステージ上に表示。共通の感動体験を背景に活発なSNSシェアが発生。
体験価値がもたらす圧倒的な違い
従来型の発表会では、参加者は情報を得られても印象は薄く、数日後には内容をほとんど思い出せなくなってしまいます。
一方、体験価値を重視した発表会では、感動や理解、参加者同士の交流が同時に生まれ、「この製品を使ってみたい」「友人にも教えたい」という行動意欲へとつながります。
この違いこそが、照明・音響・映像を戦略的に組み合わせた演出の力です。
技術別アプローチ:照明・音響・映像の戦略的活用
照明演出による感覚的体験の創出
照明技術は、製品の美しさや機能性を視覚的に訴求する最も直接的な手法です。グラデーション照明による立体感のある演出や、スポットライトでの注目度向上、スモークとレーザーによる幻想的な空間表現など、多彩な演出が可能です。
特に効果的なのは、製品の輪郭を際立たせる「エッジライティング」技術です。スマートフォンや家電製品の発表会では、この手法により製品の薄さや美しさを参加者の感覚に直接訴えることができます。また、最新のLED照明システムを活用することで、従来の白熱電球を使用した照明システムと比較して30-50%のコスト削減を実現しながら、プログラム制御による複雑な演出も可能になります。
事例紹介|視覚的に伝える!壁一面の大スクリーンを使用した美容医療セミナー(医療法人社団SMILE LAND BIANCA CLINIC様)
音響システムによる没入体験の設計
音響技術では、ラインアレイスピーカーシステムによる立体音響の実現や、参加者の行動に反応するインタラクティブ音響システムが注目されています。会場全体を包み込む均一な音圧分布により、どの位置にいても同質の音響体験を提供できます。
ラインアレイスピーカーは、複数のスピーカーユニットを垂直方向に一列に配置した革新的な音響システムで、従来の点音源スピーカーとは根本的に異なる音響特性を持っています。この配置により音波の干渉効果を巧妙に制御し、まるで音が空間全体を包み込むような立体的な音響体験を創り出します。垂直方向の音の指向性を精密にコントロールできることで、不要な反射音を抑制し、クリアで定位感の優れた音響空間を実現します。
事例紹介|【東西3会場を繋いで同時進行】約2,000名参加の年間アワードをプロデュース
映像技術による関係性体験の構築
プロジェクションマッピングやAR/VR技術を活用することで、参加者同士が同じ感動を共有し、ブランドとより深いつながりを感じられる関係性体験を構築できます。特に製品の3Dモデルを実物大で投影する技術は、製品への理解と感情的な共感を同時に生み出します。
AR/VR技術の導入により、参加者一人一人の業種や関心分野に応じて個別最適化されたコンテンツを動的に生成し、より関連性の高い体験を実現できます。複数人で同時に同じVR体験を共有することで、参加者間での共通話題や共感体験が生まれ、製品発表会後も続く人的ネットワークの形成に貢献します。
その演出、ARでもっと効果的に!今すぐ試せるイベント施策まとめ
予算効率を重視した実践的アプローチ
コスト削減の3つの戦略
効果的なイベント演出は、必ずしも高額な投資を必要としません。予算を抑えながら高品質な演出を実現するには、以下の戦略的アプローチが有効です。
- パッケージレンタルの活用:照明・音響・映像のオペレーションや機材をセットで注文することで、個別調達比較で20-30%のコスト削減が可能
- 地方会場の戦略的選択:都市部に比べて会場費が安価な地方開催により、浮いた予算を演出技術に集中投資
- 機材の購入vsレンタル判断:年間3回以上の利用でない限り、レンタルが経済的に有利
- 多機能スタッフの配置:照明・音響・映像の複数技術に対応できる技術者の活用
- 事前プログラミング:複雑な演出シーケンスを事前設定することで、当日の人的ミスを防止
- アナログ×デジタルのハイブリッド演出:高価なデジタル機材を部分的に使用し、従来の照明・音響技術と組み合わせることで費用対効果を最大化
- 段階的導入:一度にすべての技術を導入せず、イベントの重要度に応じて段階的に演出レベルを向上
ROI(投資対効果)を測定する指標
演出投資の効果を定量的に評価するため、以下の指標を設定することが重要です。
- 参加者満足度スコア:アンケート調査による5段階評価
- SNS拡散率:ハッシュタグ付き投稿数とリーチ数
- 商談創出率:イベント後の具体的商談に発展した参加者の割合
- ブランド認知度向上:イベント前後の認知度調査比較
重要なのは、製品の特性を理解し、それに最適な体験価値を提供する演出手法を選択することです。5つの体験要素を意識した演出設計により、予算制約がある中でも参加者の記憶に残る印象的なイベントを実現できます。
「限られたコストの中で、どこに投資すれば最大の効果が得られるのか知りたい」「自社に合った演出方法を相談したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。目的や予算に応じた最適な演出プランをご提供します!
今後のイベント演出トレンド
持続可能な環境配慮型イベント
近年、環境に配慮したイベント運営が注目を集めています。具体的な取り組みとして、LED照明を使用することで従来の照明と比べて消費電力を約70%削減でき、発熱も抑えられるため会場環境の改善にもつながります。また、パンフレットやアンケートをデジタル化することで、紙の使用量を最大90%削減することができます。
展示においては、繰り返し使える装飾材を活用したシステムを導入したり、イベントで発生する環境負荷を軽減するための取り組みも広がっています。
このような環境配慮の取り組みは、企業イメージの向上や運営コストの削減につながるほか、環境意識の高い参加者の方々からも好評を得られます。さらに、投資家や取引先からの評価向上にも寄与するなど、様々なメリットが期待できます。
AI・機械学習技術の活用拡大
人工知能技術の発達により、イベント演出をより効果的にカスタマイズできるようになりました。AIを活用することで、これまでにない魅力的なイベント体験を提供することが可能です。
具体的には、過去のイベント情報を分析することで、盛り上がりやすい演出のタイミングを予測し提案することも可能です。参加者とのコミュニケーション面では、質問や要望を音声で認識し、必要な情報をリアルタイムで画面に表示するシステムも導入されています。
このような技術により、参加者により満足度の高いイベント体験を届けることができ、運営側の負担軽減にもつながります。AI技術を取り入れることで、従来では難しかった一人ひとりに寄り添ったイベント運営が現実のものとなっています。
ハイブリッド×メタバース展開
コロナ禍で定着したオンラインとオフラインを組み合わせたイベント形式は、メタバース技術と組み合わせることでさらなる可能性を広げています。
次世代のハイブリッドイベントでは、3D仮想空間の活用が注目される一方で、リアル会場での演出とライブ配信を組み合わせた演出によって、オンライン参加者にも臨場感を届ける手法が広がっています。高画質カメラによる撮影やマルチ画面構成、照明演出などを取り入れることで、視聴者が画面越しでも没入できる体験を提供可能です。
また、リアルタイムの多言語翻訳や字幕システムを活用することで、グローバルな視聴者にもわかりやすく情報を届けることができます。さらに、イベント終了後には、配信映像や発表資料をアーカイブ化して公開することにより、参加できなかった方々にも後日コンテンツを届けることが可能です。
これらのトレンドを先取りし、革新的な体験価値を提案することで、競合他社との差別化を図ることができるでしょう。特に、環境配慮とテクノロジー活用のバランスを取った演出設計が、今後のイベント成功の鍵となります。
まとめ
製品発表会の成功には、照明・音響・映像技術を統合した総合的な演出が不可欠です。しかし、何よりも重要なのは、参加者にとって価値ある「体験」を創出することです。
体験価値の5つの要素(感覚的・感情的・認知的・行動的・関係性体験)を意識した演出設計により、予算制約がある中でも、参加者の記憶に残る印象的なイベントを実現できます。
特に重要なのは、製品の特性を理解し、それに最適な体験価値を提供する演出手法を選択することです。また、オンラインとオフラインを融合させたハイブリッドイベントの企画では、両方の参加者に配慮した統合的な体験設計が求められます。
今後のイベント業界では、環境配慮とデジタル技術の活用に加え、参加者一人ひとりの体験価値を最大化する「パーソナライゼーション」がさらに重要になると予想されます。これらのトレンドを先取りし、クライアントの要望に応える革新的な体験価値を提案することで、競合他社との差別化を図ることができるでしょう。
お問合せ
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