あ、そんなことまで。|電音エンジニアリングの情報発信サイト

全国アリーナ建設ラッシュ|成功する収益モデルと最新設備技術

この記事はで読むことができます。

現在、全国の自治体がアリーナの新設・建替を検討していることをご存じでしょうか?
男子プロバスケットボールリーグ(通称:Bリーグ)の新たな制度改革を控え、アリーナ建設は大きな変革期を迎えています。この変革の中で、各チームが注目しているのが新アリーナの建設プロジェクトです。関東地方では収容人数1万人規模の大型アリーナの建設が進んでいるほか、全国各地で大規模なアリーナ建設プロジェクトが動き出しています。

しかし、単にアリーナを建設するだけでは成功の保証はありません。重要なのは持続可能な収益モデルの構築と、バスケットボール以外の多目的利用による稼働率の向上です。

現在のBリーグアリーナ建設状況

全国的なアリーナ建設ラッシュの背景

今、日本では「アリーナ建設ラッシュ」が起きています。なんと、その数は都道府県数の約2倍にあたる88件にも上ります。全国的にアリーナ建設が進んでいる背景には、以下のような理由があります。

主要な建設プロジェクト事例

全国各地で進行中のアリーナ建設プロジェクトを見ると、その規模と目的の多様性が際立っています。
収容人数は5,000人から10,000人規模まで幅広く、それぞれのチームが地域特性や財政状況に応じたプランを策定しています。

大規模アリーナ(8,000-10,000人規模)

首都圏や関西圏では、コンサートやイベントでの収益性を重視した大規模アリーナの建設が進んでいます。
これらのプロジェクトでは、音響設備や舞台設備に大きな投資を行い、国際的なアーティストのコンサートにも対応できる仕様となっています。建設費は100億円を超えるケースが多く、民間企業との連携やネーミングライツの活用により資金調達を行っています。

中規模アリーナ(5,000-8,000人規模)

地方都市では、地域の実情に合わせた中規模アリーナの建設が主流となっています。これらのプロジェクトでは、バスケットボールの試合開催を軸としながら、地域の文化イベントや企業イベントでの活用を重視した設計が採用されています。建設費は50-80億円程度で、自治体の財政状況を考慮した上での建設が検討されるケースが多くなっています。

多機能型アリーナ

最近の傾向として、単一の競技に特化せず、複数のスポーツや用途に対応できる多機能型アリーナの建設も増えています。可動式の観客席、分割可能なコート、多目的ホール機能など、柔軟な運営を可能とする設計により、年間を通じた高い稼働率を目指しています。

地域密着型アリーナ

地方のBリーグチームでは、地域コミュニティとの連携を重視したアリーナ建設が進んでいます。これらのプロジェクトでは、地元住民の利用しやすさを重視し、学校行事や地域イベントでの活用を前提とした設計が採用されています。地域の特産品を活かした飲食施設や、地元企業のショールーム機能を併設するケースもあります。

多目的利用による収益最大化戦略

新アリーナの成功の鍵とは?

新アリーナの成功の鍵は、バスケットボールの試合以外でどれだけ施設を活用できるかにあります。具体的な活用例として今回は3つご紹介します。

音楽イベント
コンサートやライブなど音楽業界との連携により、アリーナを大規模なコンサート会場として活用することで、年間を通じた安定的な収益を見込めます。特に、地方都市では大型コンサートが開催できる施設が限られているため、地域の文化拠点としての役割も期待できます。

BtoBイベント
地元企業の大規模イベントや展示会会場としての利用も重要な収益源になります。BtoBイベントは平日の開催が多く、バスケットボールの試合スケジュールと競合しにくいメリットがあることから積極的に活用したいイベントのひとつです。

地域コミュニティイベント
卒業式や入学式、地域の祭りなど、地域に根ざしたさまざまなイベントで活用することで、地域全体の活性化にも貢献できます。さらに、イベントの参加者や来場者が増えることで、地域経済の活性化や観光需要の拡大にもつながり、結果として安定した収益を確保することが可能になります。

稼働率向上のための運営戦略

年間稼働率を高めるためには、利用者の多様なニーズに柔軟に応えられる会場設定が求められます。具体的には、可動式の座席や分割可能な会場設計を導入することで、イベントの規模や用途に応じて空間を自由に調整できるようにします。これにより、数万人規模の大規模コンサートやスポーツイベントだけでなく、展示会、企業セミナー、地域の小規模イベントなど、さまざまな利用形態に対応することが可能となります。

さらに、平日やシーズンオフといった稼働が落ち込みやすい時期には、割引料金を設定することで稼働率を底上げする工夫が有効です。特に、企業や団体向けに長期契約や複数回利用の特典を用意することで、継続的な利用を促進できます。また、地域住民向けのイベントやスポーツ教室などを積極的に誘致することで、地域に密着した利用を増やし、アリーナ自体の認知度と稼働率を同時に向上させることも期待できます。

このように、会場の柔軟性を高める設備面の工夫と、価格やサービス面での戦略的な取り組みを組み合わせることで、年間を通じてアリーナを常に稼働させる体制を築くことが重要です。結果として、収益性の向上はもちろん、地域社会への貢献や利用者満足度の向上にもつながります。

コスト削減と品質向上

IoT技術の活用により、施設内の空調、照明、音響、映像など各種設備を一元管理できるシステムを導入しています。これにより、設備の統合的な制御が可能となり、運営コスト削減と環境負荷の軽減を実現しています。さらに、予測保守システムの導入により、設備の故障を事前に察知して計画的にメンテナンスを実施できるため、突発的な故障によるイベント中止リスクを大幅に低減しています。

また、持続可能な施設運営の取り組みとしては、太陽光発電システムの導入やエネルギー効率の高い設備の採用により、再生可能エネルギーの活用を推進しています。加えて、リサイクル活動の推進やゼロウェイストの取り組みにより、廃棄物削減と資源の有効活用を図っています。これらの施策によって、コスト削減と環境負荷の軽減を同時に実現しています。

お悩みや疑問、まずはご相談を!

『うちの地域でもできる?』『何から始めればいいの?』そんな疑問にお答えします。
具体的な設備提案やシステム導入のご相談はこちらから!!

最新技術を活用した運営効率化

ここまで、現代のアリーナは、単なるスポーツ施設や音楽会場を超えた、地域の文化・経済活動の中心地として機能が求められていることについて紹介してきました。現在の集客で求められているものは没入感や観客体験になります。では、観客体験を向上させるためにはどのような技術が求められるのでしょうか?

五感に訴える音響体験

アリーナ内の音響設備は、単に音を届けるだけでなく、会場全体のパフォーマンスを支える重要な役割を担います。
高品質な音響環境は、イベントの魅力を引き出し、観客により質の高いエンターテインメント体験を提供します。
さらに、音響チェックや調整作業の効率化によりセットアップ時間を短縮し、工数削減や一日に複数イベントを開催することが可能となります。これにより、施設の稼働率向上にも大きく貢献しています。

デジタル信号処理(DSP)技術

アリーナにおける音響システムは、従来のアナログ技術から大きな進歩を遂げています。特に注目されるのは、デジタル信号処理(DSP)技術の活用です。DSP技術とは、音などのアナログ信号をデジタル化して、ノイズ除去や音質補正などさまざまな処理を行い、観客にクリアでパワフルな音を届ける技術です。映像の色補正や音と映像のタイミング調整にも活用されます。
例えば、従来のアナログシステムでは、大規模な会場の後方席では音の遅延や音質劣化が避けられませんでした。しかし、最新のDSP技術を活用することで、会場内のどの位置にいても同じ高品質な音響体験を提供できます。その為、全ての観客に対して、等しく高品質な音響体験を実感してもらえるようになりました。

メインスピーカーシステム

最新のラインアレイスピーカーシステムは、音響工学の進歩を活かした高性能な音響システムです。音の指向性(方向)を1度単位で細かく調整できるため、スタジアム全体にバランスよく音を届けることができます。
具体的には、複数のスピーカーユニットを縦に並べ、それぞれの音響特性を個別に設定することで、会場の形状や観客の配置に合わせた最適な音響環境を作り出します。さらに、リアルタイムで音響特性を調整できるため、イベント内容や天候の変化にも柔軟に対応可能です。

映像設備の最新トレンドと観客体験への影響

現代のアリーナにおける映像設備は、ただ情報を映すための装置から、観客の心に直接響く「体験装置」へと進化しています。高解像度ディスプレイの導入により、これまで以上に臨場感あふれる映像体験が可能になりました。

LEDディスプレイが生み出す新たな映像体験

アリーナでは、4Kや8K対応の大型LEDディスプレイの導入が進み、かつてない迫力とリアリティが実現されています。どの席から見ても鮮明で高精細な映像が楽しめるため、観客全体が一体となって盛り上がる空間を作り出せます。

LEDディスプレイは、明るさや視認性に優れているだけでなく、コンテンツの自由度が高いため、演出や広告、インフォメーション表示など多彩な用途に対応できます。
さらに、観客の自然な視線の動きを考慮した配置により、効果的な情報伝達と没入感を両立しています。イベントの種類に合わせた映像演出の最適化により、観客満足度のさらなる向上が期待されています。

インタラクティブ技術とその他の映像演出

LEDディスプレイ以外にも、さまざまな先進的な映像技術が観客体験の向上に貢献します。特に注目されるのが、観客の動きや反応に合わせて映像が変化する「インタラクティブ映像技術」です。

例えば、バスケットボールコートの床面に映像を投影するプロジェクションマッピング演出では、選手の入場シーンやインターバルのパフォーマンスタイムなどに、コート全体を特別感のある空間へと演出することができます。これにより、観客はこれまでにない没入感と高揚感を体感でき、会場全体が一体となって盛り上がる空間が生まれます。

さらに、多角度カメラによる360度映像やリアルタイム映像配信、スロー再生、ズーム機能などの技術も活用され、観客は細かなシーンまで存分に楽しめるようになりました。これにより理解度や興奮度が高まり、より個別にカスタマイズされた体験が実現しています。

▼大型LEDディスプレイを活用したアリーナ事例

導入事例|FLAT HACHINOHE(クロススポーツマーケティング株式会社 様)

これらの技術は、単なる観戦を超えた「学び」や「発見」の機会を提供し、会場全体の価値をさらに高めています。
結果として、リピーターの獲得や地域全体の活性化にもつながっています。

照明システムのスマート化による運営効率化

現代の照明システムは、単なる明るさの調整を超え、総合的な空間演出システムへと進化しています。エネルギー効率を高めるだけでなく、観客の体験価値を最大化する新しい仕組みが次々と取り入れられています。

スマート化による運営効率の向上

最新の照明システムでは、プログラム制御によってシーンごとの最適な明るさや演出を瞬時に切り替えられるため、イベントの進行に合わせた柔軟な演出が可能です。
さらに、リモート制御システムを活用することで、複数の照明ゾーンを一元管理でき、運営スタッフの作業負担が大幅に軽減されています。
省エネ制御機能により、無駄な消費を抑えつつエネルギー効率を最大化できる点も大きなメリットです。

演出効果と観客体験の深化

ダイナミックな照明演出は、観客の感情に直接訴えかける強力な手段です。音と光をリンクさせることで、観客席を含む会場全体を巻き込んだ光の演出によって、会場に一体感と高揚感を生み出します。

特に観客参加型の演出では、スマートフォンのライトや座席に設置されたLEDと連動することで、観客自身が演出の一部となる体験が可能です。これにより、ただ「観る」だけの体験から「一緒に参加する」体験へと進化し、観客の熱量がさらに高まります。

さらに、音響や映像と完全に同期する高精度な照明制御技術によって、これまでにない臨場感あふれる演出が実現。観客は複数のメディアが融合した新たなエンターテインメントを体感できるようになっています。

アリーナ設備の未来展望

次世代音響・映像技術の可能性

将来のアリーナでは、観客体験を劇的に変える技術革新が加速しています。特に注目されているのがAR(拡張現実)技術です。スマートグラスやスマートフォンを通じて、観客は現実の舞台に様々な情報を重ね合わせて楽しめます。スポーツ観戦では選手の詳細データや戦術分析がリアルタイムで表示され、コンサートでは楽曲情報や演出効果が視覚化されることで、これまでにない多層的な体験が可能になります。

▼電音エンジニアリングのAR技術はこちら

その演出、ARでもっと効果的に!今すぐ試せるイベント施策まとめ

また、音響技術の進歩により、観客の位置や好みに応じて音響環境を最適化する取り組みも始まっています。従来の画一的な音響システムから、個々の観客により適した音響体験を提供する方向へと発展しており、会場内のどの席でも最高品質の音楽やスピーチを楽しめる環境が整いつつあります。

こうした技術により、同じイベントでも観客一人ひとりが自分なりの特別な体験を味わえる時代が到来しています。

次世代アリーナの社会的価値と地域貢献

こうした技術革新とともに、現代のアリーナには地域社会への貢献という重要な役割も求められています。新しいアリーナの建設は、地域経済全体に大きな波及効果をもたらしています。建設段階での雇用創出に加え、運営段階での継続的な雇用機会の提供により、地域の雇用情勢の改善に寄与しています。

最新技術を活用したイベント開催により、周辺の飲食店、宿泊施設、交通機関などの関連ビジネスが活性化し、地域経済の好循環を生み出しています。AR技術やAI音響システムによる魅力的な体験は、より多くの観光客を呼び込み、地域の知名度向上をもたらします。

アリーナの成功には、地域住民の理解と協力が不可欠です。住民参加型のイベントや地域文化を活かしたプログラムの実施により、アリーナが地域コミュニティの一部として機能するよう努めています。また、地域の学校や団体との連携により、教育プログラムや文化活動の場としても活用され、地域の文化的な発展に貢献しています。

環境負荷の軽減も重要な課題です。AI制御による効率的なエネルギー管理システムの導入や、太陽光発電システムの採用により、再生可能エネルギーの活用を推進しています。これらの取り組みにより、運営コストの削減と環境負荷の軽減を同時に達成し、持続可能な地域発展のモデルケースとなっています。

まとめ

全国で進むアリーナ建設プロジェクトは、単なる施設更新を超えた地域創生の重要な機会となっています。Bリーグの制度改革という追い風を受けながら、各地域が取り組むこれらのプロジェクトは、スポーツ振興だけでなく、地域経済の活性化と文化的発展の拠点として期待されています。

成功の鍵は、多目的利用による持続可能な収益モデルの構築にあります。バスケットボールの試合開催だけに依存せず、コンサートやBtoBイベント、地域コミュニティイベントなど多様な用途での活用により、年間を通じた高い稼働率を実現することが重要です。同時に、DSP技術による高品質な音響システムや大型LEDディスプレイ、スマート照明システムなどの最新技術を活用することで、観客の満足度を飛躍的に向上させ、リピーターの獲得につなげることができます。

また、AR技術やAI音響システムなどの次世代技術により、アリーナでの体験は今後さらに個別化・高度化されていくでしょう。一方で、環境負荷の軽減や地域コミュニティとの共生といった社会的責任も重要性を増しています。こうした技術革新と地域貢献のバランスを取りながら、全国各地のアリーナが地域創生の新たなモデルケースとして発展していく今後の展開が注目されます。

お問合せ

アリーナ建設やイベント運営における音響・照明・映像設備についてお悩みやご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。最新技術を活用した観客体験の向上から、効率的な運営システムの構築まで、豊富な実績と専門知識でサポートいたします。

 

電音エンジニアリングについて

ホテル・ホールでのイベント演出から、オフィス・学校のシステム構築まで。音・光・映像のことなら「あ、そんなことまで。」と思われるほど幅広いサービスを提供しています!

モバイルバージョンを終了